栗花落 4


--side G--



 店を出ると雨は小降りになっていた。
 それでも傘を差さなければ濡れてしまうくらいにはまだ降っていたので、ゴドーは御剣を促して同じ傘にふたりで入ろうとしたのだが、御剣はそれを拒否する。

「もうキサマと同じ傘になど入ってやらん」
「拗ねるなよ。濡れちまうぜ?」

 軒下から出て行こうとする御剣の腕を掴んで引き戻し、間近でそう言うと、御剣は苦虫を噛み潰したような顔になった。

「口がッ……笑っているのだ!」
 言われて気付いた。
 自分ではとっくに笑いを収めたつもりでいたのだが、どうやら完璧ではなかったらしい。

「今日は、厄日だッ! 雨の日なんか、嫌いだ……!」

 随分とかたくなだけれど、御剣が厄だと思っていることはゴドーにとってはその反対のものだったので。

「雨の日も、そう悪いモンじゃねぇぜ?」
 御剣を引き寄せて、通行人から二人が見えなくなるように傘を傾けると、不満げに結ばれた唇に軽く触れるだけのキスを。
 直ぐに離れてしまった唇を、御剣が名残惜しそうに目で追うのを確かめて、幸せを上乗せする。

「だろ?」
「…………知らん」

 不機嫌な声はそのままに、けれど今度は大人しく同じ傘に入ってきた御剣が濡れないように、その身体を出来る限り引き寄せて。
 後でふたりあたため合うことを思えば、冷たい雨にどんなに濡れようが、本当は構わなかったのだけれど。


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2009.6.17 up