trianglekiss 2**R18
深く舌を絡めるキスの最後に唇をひと舐めして、そのまま首筋へと口付けを移動させると、御剣の腕が狼の首に回された。 少しだけ離れてちらりと見た御剣は目を閉じていて、その目蓋のくぼみや丸みさえも美しかった。
場所を移すことなくそのままソファに御剣を押し付けたので、結果的に照明も消されないままで、 今はもう肌蹴られた胸元のミルク色をした肌のきめ細かさまで、狼の目にはっきりと映っていた。 誘われるように手を伸ばせば、柔らかくはない胸板はそれでも狼の手にしっとりと馴染む。 小さく立ちあがった突起を指先で押しつぶすと、しなやかな肢体がびくりと緊張するのが分かった。
艶やかな反応を返す御剣に、狼はふと、我に返る。
(ええと、どうすればいいんだ……?)
男とセックスした経験なんてないし、相手は余裕たっぷりの御剣だ。情動に衝き動かされて押し倒してしまったが、狼にはこれっぽっちも余裕などなかった。
「どうした?」
ぴたりと動きを止めた狼に、御剣の声がかかる。けれどさすがにやり方がわからないなんて言える訳もなくて答えあぐねていると、 首に回った御剣の手に引き寄せられて唇が重なった。狼の唇を舌でなぞり、さらに閉じている歯をつつかれる。 半ば無意識に開いた口に遠慮なく入ってきて舌を絡めとられて、その巧みさに応えないわけにもいかない。そのまま唇を強く押し付けて深く舌を絡めれば、 角度を変えるたびに濡れた音が響いた。
「余計なことを考えるな。ただ、自分が気持よくなれるように動けばいい。ついでに私も気持ちよくしてくれ」
唇を離してすぐの御剣の言葉に、なんてことを言うのだと思ったが、今のキスで少し吹っ切れたのも確かだった。そう、確かに、考えていても仕方ない。 御剣の言うとおり……いや、少し違う。御剣が気持ちよくなるように、ついでに自分だ。
指と唇で肌を愛撫しながら、そのベルトに手をかけると、御剣は熱っぽい吐息を小刻みに漏らしながら上半身を起こして狼に手を伸ばしてきた。 掴まるところが欲しいのかと思ったのだが、その腕は狼の背に回されることはなく、着たままになっている狼のジャケットを肩から外そうと動いた。
そう言えば、御剣は半裸でベルトすら緩められた状態なのに対し、狼はジャケットすら脱がないままで。 改めて自分の余裕のなさに気付いた狼は御剣の手の動くまま上着を脱いだ。
「良く似合っている。脱がすのがもったいないな」
うっすらと目を細めて御剣がそんなことを言うから、そのジャケットは一瞬で狼のお気に入りになってしまう。 今日初めて会った人間相手に、こんなふうにのめり込むことは普通に考えれば恐ろしいことのはずなのに、どこか当然のことのように思う。 まるで鼠がチーズを欲しがるのが当たり前なのと同じように。
初めて出会った時点で手遅れだなんて、笑うこともできない。
お互い下着だけの姿になって、御剣の身体をもう一度押し倒す。
下着の上から先端をなぞると御剣が息を呑むのが分かって、我慢もきかずにゆるく勃ち上がったそれを外に出した。 根元からゆっくり扱き、親指が裏筋にあたるように撫であげると御剣の腰が震える。
「あっ……は、」
漏れた声と快感を耐えるように閉じられた瞳に狼自身も昂ぶるのが分かる。御剣が自分の手で感じているという事実だけで、熱くなる身体を抑えられない。
上下に大きく擦りながら、先端に溜まった液を指で塗りこめるように手を動かすと、御剣の手が狼の腕を掴む。 けれどそれは狼の手の動きを制するようなものではなく、まるで快感に追い詰められて縋るようなそれで、狼の熱は上がるばかりだった。
「はぁ…、んッ」
「アンタ、感じやすいんだな。少し触っただけで、こんな」
「ふふ……荘龍の弟にされてると思うと、興奮するのかもな」
「……そうかよ」
根元を強く擦り上げながら片手で先端に爪を立てると、御剣の太ももに力が篭もる。そのまま先端を刺激し続ければ上ずった声が連続して御剣の唇から漏れた。
「ひ、ぁあ……や、ぁッ」
「なら、あいつの弟とか、そんなこと考えられなくしてやるよ」
胸を愛撫していた顔を下腹へとずらし、勃ち上がった御剣のそれに手を添えて、舌で全体を包み込むようになぞる。 唾液を多く含ませた唇と舌で愛撫すると御剣からは反射的に拒絶の声が上がった。嫌だ、なんて言葉は聞くつもりもない。本気で言っていないことなど分かっている。
尖らせた舌で先端を何度も刺激し、軽く吸い上げると御剣の手が狼の髪を掴む。切迫したその仕草に、わざと音を立てるように先を吸いながら 根元を手で擦り上げると、背中を震わせながら御剣は精を放った。
御剣に髪を引っ張られていたため、狼の口内だけではなく頬にまで飛んでしまった白濁を片手で拭うと、その手はすぐに御剣に捉えられた。 そのまま狼の手を口許に持って行き、見せつけるように舌を出してぺろりと精を舐めとる、まるでまだ余裕だと言わんばかりの態度に征服欲が刺激される。 挑発されているのだということは、分かっているのに。
御剣の精と唾液で湿らされた指を後ろへと差し入れる瞬間、首に回された御剣の腕にぎゅっと力がこめられた。 表情に苦痛が混じっていないか注視しつつ、根元まで指を埋め、中で円を描くようにゆっくりと動かしながら御剣を見ると 眉根は寄っているが頬は上気している。苦痛だけ感じているのではないようで安心した。
慎重に粘膜を指の腹で刺激しながら往復させていると、しだいに内側が指に吸いつくように動き始めて、狼の指がスムーズに動くようになった。
「んぁッ……ふ、ぅ…っ……!」
指を一本増やして奥を刺激すると、御剣は狼の首を引き寄せて肩口に顔を埋めてしまった。構わずにそのまま同じところを何度も指で刺激すると、 くぐもった嬌声とともに狼の下敷きになっている腰がびくびくと跳ねた。素直な反応を嬉しく思うのと同時に、やはり慣れているのだと思い知らされる。 兄の恋人だということを考えてしまっているのは実際のところ御剣よりも狼の方だった。堪らなくなって御剣のうなじに咬みつく。 痕を残すのはマズいんだったか、とふと思ったが、もう遅い。
「あっ……しりゅ、もう……」
快感に潤みきった目で限界だと告げてくる、その表情にこちらがあてられそうになって、狼は触れてもいない自分の性器がそれこそ限界まで勃ち上がっている ことを自覚しないわけにはいかなかった。
「そろそろ、いいか……?」
言いながら指を引き抜けば、御剣の背が仰け反る。漏れた声に苦痛の響きがないことに安堵しながらその膝を割ろうと動くと、御剣が狼の下着に手を伸ばしてきた。 ゆったりとした動作で狼のものを下着から取り出すと、ゆるく撫であげる。それだけの刺激で達してしまいそうなほどに煽られて、狼は奥歯を噛みしめた。
「私も、シてやろう」
言ってることも凶悪なら、見せつけるように唇を舐めながら薄く笑うその表情も凶悪だ。
「……いや、いい」
「なんだ、遠慮してるのか?」
違ぇよ! と怒鳴ってやりたかったが、それじゃあまりにもかっこ悪すぎる。こんなやり取りをしている間も御剣の手で自身をゆっくり扱かれている、 その刺激だけでもイってしまいそうだなどと、言えるわけがない。
「早くアンタの中に入りたいんだよ」
「…………」
また何かからかうようなことを言われるのかと思ったが、予想に反して御剣は少し俯いて黙り込んだ。
沈黙は肯定、とばかりに狼は御剣の腰を少し持ち上げて一気に貫いた。
「んあぁッ!」
御剣から零れた声は、快感ゆえというよりはいきなり侵入してきた狼に対する驚きに近いようであったが、辛そうということもない。
ゆっくりと前後に腰を揺すると、吸いつくように絡んでくる熱い内部に、それだけで簡単に昇りつめそうになる。 カッコ付けないで一回出しておけば良かった、と狼は情けない後悔に苛まれるが、今更どうしようもない。三擦り半など冗談ではないから、頑張るしかない。
さっきまで指で愛撫していた場所を意識しながら腰を動かして、同時に御剣自身にも手を伸ばして熱を高めるように擦り上げる。 知らず、早急な動きになってしまうのは、自分に余裕がないせいだと分かっている。
「んっ……そこ、は…あっ」
「は……御剣…っ」
全て持っていかれそうな快感と身体中を満たす激情で、狼は堪らず御剣の名を呼ぶ。
欲しかったひとはたった今自分の腕の中にいる。これ一度きりの情交だとしても、否、だからこそ、狼は御剣に気持ちよくなって欲しいと、 それだけを考えていたはずだった。傷つけたいとは思わない。なのに、御剣をもっと啼かせたい、喰らい尽くしたいと、凶暴な感情が抑えられない。
何度目かの衝動をやり過ごして御剣の顔を正面から覗くと、恍惚とした表情で目を閉じていた。狼の視線に気付いたのか、薄っすらと目蓋を持ち上げたその瞳は それでも焦点が定まらないまま蕩けている。そんな淫らな顔のまま、まるで狼を求めるように両手を伸ばされて、背筋に甘い痺れが走った。
(クソッ、ただでさえヤベェってのに……)
このまま何時間でも、一晩中でも抱いていたかった。けれど限界は確実に近づいてきていて、ままならなさに舌打ちしたくなる。
御剣の片足を抱え上げて、さらに深いところまで自身を埋め込むと、御剣から甘い声が上がった。狼の右手の中にある御剣のそれも、熱く脈打って解放が近い ことを伝えている。
「奥が、イイのか?」
「はっ、ん…イイ…や、あぁ!」
御剣の切迫した喘ぎに、堪えられなくなって狼は深く突きあげる。
今だけは目の前のひとを自分のものにしたくて、せめてこの瞬間だけは御剣の中を狼の存在だけで埋め尽くしてしまいたくて、想いをぶつけるように激しく腰を打ちつけた。
今度こそやり過ごすことのできない波が狼を襲って、ギリギリまで深く突きあげてから引き抜いた。御剣の腹の上に出すつもりが、間に合わずに少しソファを汚してしまう。 一気に抜かれる衝撃で御剣も達したようで、狼の手の中で熱を吐き出したそれは余韻にびくついていた。
気だるげに目を閉じながら狼の背を撫でる御剣に、衝動のままに唇を重ねる。歯列を割れば柔らかな舌が応えてくる。それでも、これで終わりなのだ。
ソファにはうっすらと白いシミが出来ていた。すぐに拭き取ってはみたのだが、完全には落ちなかったようだ。ソファの色が黒だというのも、悪条件だった。
「あー……悪ぃ、取れねぇみてぇ」
自分が暴発した末の不始末にバツの悪い思いをしながらそう告げれば、御剣はまだ下着姿にシャツを羽織っただけの格好で、あまり興味もなさそうに狼を一瞥した。
「そのままにしておけ。荘龍に言えば消してくれる」
「は?」
「あの男はそういうのが得意なのだ。おかしな裏技を色々と知っているし」
聞き返したのはそういうことじゃない。混乱しそうになるのをなんとか堪えながらもう一度注意深く言葉を選ぶ。
「兄貴に見せんのはマズいんじゃねぇのか? これ……何の痕かなんて、アイツならすぐ分かるぜ」
「別に構わない」
「構わないって……」
どういうことだよ、という言葉は声にならなかった。
「そんな痕がなくとも、荘龍にはすぐに知れる」
そう言った御剣はあくびをひとつしてソファにだらりと身体を預ける。今にも眠ってしまいそうだ。
それは確かに、御剣がそんな格好のまま兄を迎え入れれば、ソファのシミなど問題ではなくなるだろう。
「とりあえず、着ろよ」
御剣のいるソファに向かって、先程自分の手で脱がせた衣服をポイポイと投げる。御剣は迷惑そうな顔をしながらもしぶしぶ身体を起こして袖を通し始めた。
「取り繕っても無駄だと思うぞ。あの男に嘘をついて隠し通せたためしがない」
心底めんどくさそうに言うので、本当に無駄だと思っているようだ。だが、御剣の態度を見ていると、本当に本気で嘘をついたことなんてないんじゃないかとも思う。 嘘などつく必要のない関係なのか、と自虐にしかならないことを考えて、すぐ消した。
「アンタは良くてもなぁ、オレは殺されかねないぜ?」
「ふん、どうだかな」
鼻を鳴らした御剣は口端を引き上げて笑みの形をつくって狼を見つめてきた。笑っているのに、不機嫌なオーラが出ている気がする。さっきまでの面倒げなもの とはまた違う不機嫌さだった。どうしてそんな態度になるのか分からなくて、狼は眉を顰める。真意を訪ねようと口を開きかけたところで、玄関のドアが開かれる音がした。
2010.09.13 up